この家には小人が住んでいる

老いの花道 河合隼雄

逆転の発想は大事です。
「うちのおじいちゃんは何もしないで座っているからダメだ」と考えるのではなく、「何もしないからすばらしい!」と考えると、いいところがずいぶん出てくるのではないでしょうか。
縁側に1日中座っているなんて、考えてみればすごいことですよね。

ユーモアも大事です。
私は家内と二人で住んでおりますが、よく物がなくなります。
引き出しに入れておいたものがなくなっていて、変なところから出てきたりする。
そのとき、私が悪いのか、妻が何かしたのかと考えだすと大変なので、二人で「この家には小人が住んでいる」という結論を出しました。
だからまた小人にやられました!と思うだけで、ずいぶん気持ちが変わります。

さて、高齢者の方にどう接するかかということは非常に大事な問題です。
我々はすぐに「高齢者対策」なんて言いますが、自分が高齢者になってくると、この言葉はあまりいい感じがしません。
「対策」なんて言わず、人間と人間が一緒に生きるという姿勢が大事なんだと思います。
また、猫なで声を出されたり、子ども扱いされるのも不愉快ですね。
1人の人間と1人の人間が会っているんだ、という意識が根本になければいけないと思います。