こころ安らかにさせてくれない医療

心あたたかな医療を 遠藤順子

実は、実際に主人が亡くなるときにも、死ぬときには心安らかに死なせてほしいという主人の意思は全く反映してもらえませんでした。
主人が亡くなる前の日に、看護師さんが主人に食事をさせている時、急に主人の顔色が真っ白になりました。
誤嚥というのですが、食道に入るべきものが間違って気管の方へ入ってしまったのです。
健康な体なら、ゴホンと咳をして出しますが、主人は体が弱っているので出せません。
あわてて看護師さんが電話をかけて、助けを呼びました。
すぐに看護師の方々が機械をもってきてくださって、詰まったものは2~3分で取れました。

顔色も徐々に元に戻ったので、よかったと思っていると、今度は主治医が見えてこうおっしゃいました。
「食べ物が気管を通って肺に入ってしまいました。ご存じのように、食べ物にはたくさんのばい菌がついていますから、これから肺炎がおこり、重篤な熱が出ます。遠藤さんは昔、肺を切除していて、普通の人より肺が三分の一ぐらい少ないので、おそらくその熱に耐えられないでしょう」

一難去ってまた一難です。
そして「奥様はちょっと外へ出てください」と言われたので、病室を出ました。
このことは今でも後悔の種になっています。
30分くらい経って、どうぞと言われて部屋に入ると、そこには人工呼吸器をつけられた主人が横たわっていました。