がん論争はありがたい

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

がん論争はありがたかった。
社会が僕の主張に気づき、胃がん、肺がん、前立せんがん、乳がん、子宮がん、膀胱がんなど、多くのがん患者が無治療、経過観察を希望して外来を訪れるようになったからです。
何年にもわたってがん放置経過を観察して、僕はこれまでの主張の正しさを確信しました。
①がんもどきは何年放置しても転移がない。
②転移が生じた場合には、初発病巣が1㎜以下などの早期発見が不可能な時期に転移していることを確信したのです。

2013年4月以来、ご家族も含めて2700組以上の相談にあずかりましたが、相談事例からは、日本の患者さんたちがおかれた悲惨な状況が見えてきます。
あらゆる臓器がんのすべてのステージの患者さんがお見えになりますが、その95%以上が不当な治療法を受け、あるいは提案されています。
典型は食道がんです。
放置または放射線治療で食道を残すべきなのに、手術を勧められてしまう患者がほとんどで、中村勘三郎さんの二の舞になります。
患者さんや家族は疑うことを知らないから、外科医に「先生のご家族だったらどうしますか?」と聞くのですが、それは禁句です。
それが証拠に、かつて慶応病院で食道がんグループのチーフを務めていた外科医は、自分の母親が食道がんになった時、放射線治療を受けさせました。
また消火器がん手術を専門にした医師は、慶応大学教授に就任した後、食道がんが発覚。
その医師は放射線治療を選んだのです。