お願いだから、いじめなんかしないで!

ココロの架け橋 中野敏治

生徒たちは、思い思いのことを口にしましたが、しばらくすると、クラスは静かになりました。
生徒たちの話し合いでは解決ができないのです。

しばらく沈黙の後、普段はあまり目立たない生徒が手をあげたのです。
そして、立ち上がって小さな声で「私は小学校の頃、いじめにあっていました。辛かったです」と話し始めたのです。
みんなは、びっくりしました。
今までいじめについて考えた授業でも、何も意見を言わなかった彼女が、自分の過去を話し始めたのです。

「小学校のとき仲の良かった友達から・・・私だけがそう思っていたのかもしれないけど、でも私は親友だと思っていたの。その子が急に私を無視してきて、その子だけでなく他の友達も私を無視し始めたの。無視される原因が分からなかったよ。辛かったよ。普段から、先生も親も『何かあったらいつでも何でも話してね』っていうけど、言えないよ。だって、親に心配かけられないもの。誰にも言えなかった。辛かったよ。いじめは駄目だよ。いじめのあるクラス、いやだよ。私、この学校に転校してきて、毎日楽しんだから。いじめなんかしないで、お願いだから」と、泣きながらみんなに話したのです。
彼女の話しを聞きながら、何人もの生徒が泣いていました。

彼女の訴え以来、クラスが変わりました。
いじめや嫌がらせ、悪ふざけがクラスからなくなっただけではありませんでした。
クラスが今まで以上に明るくなっていったのです。
そして、クラスメートのために、進んでいろいろな仕事をしあうようになってきたのです。