私は家に帰った途端、わんわん泣いた。
ラムネやらチョコやらかっぱえびせんなんかが・・・もうこれでもかと一杯入ったお菓子の詰め合わせを抱きしめたまま。
それを見た母は黙っていた。
この時だけは「うちにはお父さんがおらんからね」とは言わなかった。
それから何日か経って、私も誕生日を迎えた。
朝学校に行く前「ゆかり、今日は誕生日やから友達一杯連れておいでや~」と母。
「え? うん・・・」
正直言うと、私は乗り気じゃなかった。
貧乏くさい誕生日会なんか開いて、恥をかきたくなかったから。
母には「みんな忙しかったみたい」って言おう。
その日授業が午前中に終わると、私は誰にも声をかけず、逃げるようにして家に帰った。
だから、学校から帰ってきて家のドアを開けたとき、私は帰る家を間違えたのかと思ったんだ。
大きな画用紙に、カラフルなペンで「HAPPY BIRTHDAY ゆかり」、カラフルな風船、折り紙の輪っか飾り、チリ紙の薔薇。
ハンバーグ、たこさんウインナー、カニクリームコロッケ。
部屋には飾り付けがしてあって、食卓にはごちそうが並んでいて。
そして、お菓子の詰め合わせ。
めぐみちゃんからもらったのと、そっくりなやつ。
びっくりしていると、台所から母が出てきてニッコリ笑った。
そして私を見るなり「あれっ、一人?」と言った。
「あっ、うん、みんな今日忙しいねんて」
私はとっさにウソをついた。
「そっか」母はもっとにこやかになって「それなら、二人で誕生日会しよっか」と私の手を引いて椅子に座らせてくれた。