ココロの架け橋 中野敏治
「にこにこはね、こうだよ」と言いながら、少し長めに笑うのです。
そして「にっこりはね」と言いながら、短めに笑うのです。
クラスの子どもたちは、何となくうなずいていましたが、納得はしていない感じでした。
その様子を感じ、みんなが納得していないと思いながらその男の子が席に戻りかけたときです。
「あ~!」と女の子の小さな声が教室に響きました。
「先生、分かった!分かったよ!お誕生日にプレゼントをあげるでしょ。そのときに『にっこり』してプレゼントを渡すよ。反対に誕生日のプレゼントをもらうとき、うれしくて『にこにこ』するよ。そうだよね。そうだよ、、そうだよ。きっとそうだよ」と、自分を納得させるように、大きな声でクラスのみんなに話しました。
その話しを聞いたクラスの子どもたちは、「そうだよね、そうだよ。そうだよ」とみんなが言い始めました。
この女の子の答えに驚きました。
プレゼントをあげるときと、もらうときの違いが「にっこり」と「にこにこ」の違いなのだという言葉に、私も納得しました。
大人が知識として知っていることや、辞書に載っていることを子どもたちに単に伝えていくだけでは、子どもたちはどれだけ理解し、納得するでしょうか。
もし、この授業の中で、教師が「さあ、みんなで『にっこり』と『にこにこ』を辞書で調べてみましょう」と指示を出していたら、子どもたちはどのような反応をしたでしょうか。
「なんだ、同じ意味なんだ」で終わってしまったかもしれません。