50代の銀行の支店長さん 1

死ぬときに幸福な人より

銀行の支店長を務めていた50代の男性の患者さんは、厳しい仕事ぶりでメキメキ成績を挙げ、高卒でありながら大卒の同期よりも早く支店長になり、収入も増えたそうです。
ところが検診で肺がんが見つかりました。
がんの進行はあまりにも早く、治る見込みがなかったため、彼は緩和ケアを受けることを決意しました。

最初のうち彼は、ひどく苦しんでいました。
元気だった頃の彼は、家族のことも顧みず仕事に打ち込み、「仕事のできない人間は、銀行にとっていらない人間だ!」と考えていました。
そんな自分が、仕事ができないどころか、人の手を借りなければ日常生活もままならなくなってしまったことを嘆き、「一生懸命働いてきた自分が、どうしてこんな目に遭わなければならないのか!?」と怒り、声を荒げていました。