3000年の火鉢を

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

僕は、この火鉢が、一にも二もなく欲しくてほしくてたまらなくなりました。
いいえ、もはや僕は、火鉢を買うためにお金を払うのではなく、屋久杉に向き合う岳南さんの心と魂と生き様に対価を払って、その一部を分けてもらうという心境でした。
「そうか、気に入ってくれたか。どの位なら買うつもりか言ってみてくれ」
岳南さんに問われても、膨大な歳月を経てきた屋久杉の火鉢に値段をつけるなど、とても僕にはできず、何も言い出せずにいました。

100万円、150万くらいならぜひ欲しいと秘かに思っていたところ、僕の心中を見透かしたように、「50万だったらどう?」と切り出されたので、即「ええ、それは是非お願いします!」と答えました。
すると岳南さんは、「そうか、そこまで値打ちを見てくれたか。あんたの返事の早さが気に入った」と、さらに値引きして35万円にしてくれたのです。

これを僕、僕の子ども、孫、ひ孫と代々使い続けて、この火鉢の生い立ちを語り継ぐのなら、安すすぎる値段といっていいでしょう。