2つの質問

トップクラスのビジネススクールで講演をした元ハーバード大の教授だったマーク・アルビオン氏は、学生たちに2つの質問を投げかけました。

1つ目は「MBAの資格を取得した後、身につけた高度な知識と技術を生かして、実社会で何をしたいのか?」
そして2つ目は「人間として尊敬できる人間は誰か?」です。

最初の質問にまともに答えられる学生は決して多くありませんでした。
安定した(または裕福な)暮らしを求めて目指す業種や企業については、彼らなりの「算段」があるようです。
けれども、そうした仕事を通じて一体自分が何をしたいのかは、漠として分からないのです。

一方2つ目の質問には、大半の学生が具体的に答えています。
マザー・テレサ・キング牧師・シュバイツァー博士・ガンジーなどです。
いわゆる「人々のために貢献した」人物が圧倒的に多いのです。
意外にも、肝心のビジネス界の人物を尊敬の対象や見習うべき手本とされるケースはほとんどありませんでした。

学生たちは、真に人間的な「心」を大切にし、社会のために献身的に働く人々を本当に尊敬に値する人物と考えています。
なのに、その一方で彼らは、企業の利益と自分の出世を第一とするビジネススクール流の教えをしゃにむに学んでいるのです。
これが人間の弱さです。
「尊敬すべき人物を手本」としながら「心の声に忠実に振舞う」ことは決して容易ではないからです。

「愛情のない仕事をするのなら、奴隷と少しも変わりません」
マザーテレサはこう言いました。