2つのバースデー 2

初めてのケーキは6号サイズ(18センチ)のホールケーキ。
でっかい苺のショートケーキにはこんな思い出があった。
小さいころ私は好き嫌いが本当にひどく、体が弱くて、いつも心配していた母が私の誕生日の時に、まるで絵本に出てくるお城のような、でっかい苺のショートケーキを作ってくれたのだ。
そのケーキに興奮した私は、母から「ご飯を残したら次に誕生日、苺のケーキはなしよ!」と言われて素直に従うようになり、そのうち好き嫌いがなくなった。
今ではすっかり健康だ。

だが、ガラスケースの中には、相変わらずでっかいショートケーキが、3,880円という立派な値段をつけて売れ残っている。
ちょっと張り切って大きいのを作りすぎたかなあ。
「どう、売れた?」
工房から出てきたおじさんが、明るい調子で尋ねてきた。
苦笑いしながら、首を横に振る。
「まあ最近、ホールで買う人は少なくなってきたからね。残ってしまったら後でみんなで食べようか」笑顔で言って、おじさんは工房に戻った。
ごめんなさい、おじさん。
カットしていたら、もっと売れていたかもしれない。
でも私は、初めてのケーキはどうしてもホールで売りたかったんだ。