1時間半の講演会

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

講演にたくさん呼ばれるようになってから僕は「何のために呼ばれるのか?」を考えるようになりました。
その1つが、子供や若い人に、大人として何か伝えることではないかーそう気づいてから、僕は積極的に学校の生徒に向けた講演会に取り組み始めました。
ただ、講演前に、係の先生方が異口同音に言われることがあります。
1時間半の講演を予定している僕に、
「中村さん、45分の授業でさえ、10分経ったらそわそわし始める生徒が、1時間半も聴いていられるはずがありません」
そして、講演会の後に質問の時間を設けたいと言うと、先生方はこう口をそろえます。
「活気も好奇心もなく、クールそのものの生徒から質問なんか出ませんよ」

いざ始めてみると、休憩もないのに授業の倍の時間、生徒たちは、瞬きもせず、僕の話しに聞き入ってくれることがほとんどでした。
僕は、頭のいい話しはできません。
自分の体で体験し、心の底から「そうだ!」とうなずけたことを、精一杯熱く、できるだけ面白く楽しんでもらえるように、しゃべりまくるだけです。

質問時間には、ちょっとした工夫が必要でした。
もじもじしているだけで誰も手を挙げてくれません。
そこで僕はこう言いました。
「質問したいなあと思ったけれど、勇気が足りなくて手を挙げられない人がいるんやないかな。そう言う人は、正直に手を挙げてみ。当てないから」
さらに僕は言いました。
「聞きたいことは、今聞くんだよ。恥ずかしくても、それをしなかったら、今のまんまの自分でしょ。聞けば、未来を変えることだってできるんだよ」
何人かの目つきが変わったのが、感覚的に分かりました。