1年に1度

いのちの言葉 ホスピス医 柏木哲夫医師

アメリカには、死別を体験した遺族のための、死別カウンセラーという職業があります。
これは、あるカウンセラーの実話です。
その方は、牧師だったご主人を交通事故で亡くし、悲嘆にくれていました。
そのとき、教会から来てくれた人の言葉に余計に傷ついたそうです。
それは「いつまでもクヨクヨしていないで、教会でみんなと一緒に歌いましょうよ」といった安易な励ましでした。

そんな中、なじみの青果店のご主人は、かご一杯の野菜を持ってきて「奥さん、大変だったね。つらいね、悲しいね。買い物をする気もしないでしょう。野菜を持ってきたから使って。本当に悲しいね」と言って、きゅっと抱きしめてくれました。
これが彼女の心を一番癒してくれたそうです。

ところで、私が皆さんにアドバイスするのは、1年に一回、たとえば誕生日に自分の死について考えてはどうかということです。
「ちゃんと死ねるかな?」とか、家族のこと、財産のこと、やり残したことなどを考えておくべきだと思っています。