高齢者はダイエットはご法度

70歳からの選択 和田秀樹

高齢者になると、メタボ健診で「膝や腰の負担を軽くするためにもやせなさい」などと指導されることがあります。
また、更年期を迎えた女性は、女性ホルモンの減少にともない内臓脂肪が増えていくため、ぽっこりとしたお腹になりやすいこともあり、健康と美容のためとダイエットに走る人も少なくありません。
しかし、こうしたダイエットは、一気に老け込むリスクを高めます。
高齢者になると一般的に食が細くなってきますが、知らないうちに栄養失調になっていることも少なくないのです。
70代になったら、ダイエットなどするべきではないのです。

また、テレビのCMなどでも、瘦せることをやたらに推奨するため、少々ふっくらとしただけでも、多くの人が体に良くないと考えるようになってしまいました。
しかし、それは、誤った思い込みです。

2009年に公表した、宮城県内の40歳以上5万人を対象に行った大規模調査によるデータでは、もっとも長生きなのは、少々ふっくらとしたタイプの人だということが判明しています。
しかも、やや太めの人の方が、やせ型の人より6~7年も余命が長いことも明らかになっているのです。

アメリカでは虚血性心疾患の原因となる動脈硬化を防ぐ意味で、体重指導に躍起になっているのは理解できます。
しかし、日本の場合は、死因のトップはガンであり、虚血性心疾患はOECD諸国の中でも格段に少ないのです。
真面目にメタボ指導に従ってやせてしまうと、逆に寿命を縮める結果を招くことを、統計データが示しています。