頂いた命を他の生命にお返しをしていく

いのちの言葉 作家 高史明

この「自分」とは何だったのか。
自分が信じられないから、万人が信じられない自分だったのです。
その一人は、ただ崩されるのを待つだけという思いを抱いていた自分です。
それに思い至ったとき、私は、子どもに言った励ましの言葉の闇に気づかされました。

「他人に迷惑をかけるな」という私の言葉は、一見正しいかに見えますが、気づいてみるとそこに「私中心」に生きるようになった近代の人間の闇が表れています。
人間、何人といえども、他人の働きなしには一日も生きていかれないのでした。
例えば、歩いている道は自分がつくったものではない。
毎日頂くご飯もそうです。
他に作った人がいたから、そのおかげで利用することができたわけです。

それを全身でうなずけていなかった。
お金を払っているから、何人にも迷惑をかけていないと思っていたのです。
これは、命の大地を見失った人間の姿ではないでしょうか。

多くの生き物、無数の人々の働き、そして、繋がりの中で自分が生きているということを知ったとき、はじめて人間は本物の自分になる一歩を始めるんだと思います、
頂いてきた命を大事にして、他の人や他の生き物にもお返しをしていくような生き方です。