難病 3

日本人の死に時より 医師の書

しかし、患者さんはあらかじめ決心していたようで、気管切開をきっぱりと拒否しました。
ご主人が、「我々夫婦には子供がいませんから、楽しみは二人で語り合うことだけなのです。気管切開で話しができなくなるのなら、そこまでして生きたくないというのが妻と私の気持ちなんです」と言いました。

しかし、病気は残酷にも徐々に進み、ほとんどマスクをはずせなくなりました。
呼吸困難に続き、腰痛と関節の痛みが出てきました。
身体を全く動かせないので、耐えがたいだるさと痛みに襲われるのです。

私が仕方なく、モルヒネをすすめました。
患者さんは「そうやね、もう辛抱せんでもええもんね・・」とつぶやきました。