隣の芝生は青くない

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

人を最も卑しくするのは羨望だと思う。
「隣の芝生は・・」という言葉があるように、概して隣の家のもの、他人のものはよく見える。
だが、隣の芝生に実際に足を踏み入れてみれば、雑草も交じり、草むしりや芝刈りもしなければならない。
虫がいるかもしれないし、芝生に足をとられて転び、足をくじくことだってあるだろう。
隣のものは、自分の手元にあるものより良く見えるが、それは虚像というもの。

最近、私の病院を訪れる患者さんの中に「欲しいものは絶対に手に入れる」と信じ込んで、手に入らないと「相手が悪い」「社会が悪い」と攻撃する人が増えている。
家庭内暴力の原因も、多くは欲求をコントロールできないイライラの暴発である。
人生はできるだけ思い通りにいかない方がいい。
思い通りにかないからこそ、他の方法はないかと工夫を凝らすのだし、その場は思いとどまる抑制の訓練もできる。
工夫や抑制の結果、望みを叶える好機に出会い、一気に願望が実現したときの、そのうれしさといったら・・・。