進路先

ココロの架け橋 中野敏治

実は、彼は自分の心の整理ができなくなると、部屋にこもって自傷行為をしていたのでした。
母親と彼と話しをしながら、そっと彼の腕を見ました。
まだ新しい傷がそこにはありました。

母親の話しでは、進路先について父親は「どうしても公立高校に行ってほしい。いや、公立高校でないと受験させない」と言っているというのです。
でも彼には、どうしても行きたい私立高校があったのです。
彼はそれを口に出せなかったのです。
それで昨晩も言い出せず、自分の部屋の閉じこもっていたというのです。

「俺、A高校のB科に行きたい。ずっと前からそう思っていた」と小さい声だが、しっかりとした口調で話しました。
彼に「どうしてそこに行きたいんだ」と尋ねると、彼はとてもよくその高校のことを調べていました。
実際にその高校に行き、取得できる資格を調べ、自分の将来の職業までも考えていたというのです。
「なぜ、お父さんにそのことを話さないの?」という私の言葉に、「だって親父は頑固だから、一旦ダメと言ったら絶対ダメなんだ。俺が小さいころからずっとそうだった。それに、お金が公立高校より少し余計にかかるし・・・」と彼は涙声で話しました。