賭け

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

日本を代表する企業ソニーも、昭和35年に超小型トランジスタラジオによるヨーロッパ市場を開拓を目指し、営業マン3人が羽田空港を飛び立ったころは、町工場程度の中小企業でしかなかった。
しかも、当時メイドインジャパンと言えば、安かろう悪かろうの代名詞、コメディアンのボブ・ホープがピストルを構え、弾が出ないと「メイドインジャパン」という。
これで大笑いが取れた時代だったのだ。

チューリッヒに事務所を開いて、3人のスタッフ全員が1日5か国を周る強行スケジュールの中、所長の小松さんは自分と1つの賭けをした。
喫茶店に入り「注文は?」と聞かれたら、「ソニーをください!」というのだ。
「ソニーはラジオでしょ」と言われる日が来るか、来ないかという賭けだった。