認められたい人ほどつらくなる

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

ある中堅の商社で働く女性のEさんは、「まじめに懸命に働いているのに、周りの人たちが冷たい目で私を見てくる。どうして・・・」という。
さらには「みんなで私のことを、会社から追い出そうとしているのだ」ともいう。
そのうちに、周りの人たちのことを全く信用できなくなり、言葉を交わすことさえ嫌になったという。

しかし、よく観察してみると、周りの人たちは彼女を「冷たい目で見ている」わけでもなく、「会社から追い出そうとしている」わけでもなく、彼女自身がそう思い込んでいただけである。
だが彼女は、いくらそう言っても自分の思い込みを信じ、周りの人たちの言動は、すべて自分に関することと思うようになる。

さて、このような心理状態をきたすような人には、ある特徴がある。
上昇志向が強く、また野心家、人に認められたい、出世したいという意欲が強い。
また、元々人への警戒心が強いために、人の目を気にする、ストレスがたまる、精神的に疲労困憊し、ますます過剰に人の目を気にするようになる。

心が元気なうちは、「他人がどう思おうとかまわない!」と勇ましい気持ちになれるのだが、心が弱り始めると「あいつ、人の足を引っ張るようなことばかりして」となりやすい。
そうならないためにも、しっかり休んで「心の元気」を取り戻すことが先決である。
しっかり休むコツは「人のことは気にしない」ことなのだが、またそれができれば、「妄想」から身を守るコツともなるのだが。