試行錯誤のあとに

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

「自分のやりたいことを見つけよう」「ほんとうの自分を見つけるために」・・近年、やたらと目につく言葉である。
そしてそれが、世間一般の常識のような言われ方をされ、個人にプレッシャーを与える結果になっている部分もある。
本来「やりたいことを見つけましょう」というメッセージは、個人の意思や希望を尊重するためのものだったはずなのに、その言葉が個人にプレッシャーをかけ、足かせになってしまうのは本末転倒である。

「自分な何のために生まれてきたのか?」「この世で何をし、何を残すべきか?」と考えることは、まさに人生を考察し、思索することである。
それを誰か他人に問うて、「あなたのやるべきことはこれですよ!!」と言われて、納得できるものではない。
だからこそ、それに対してはっきりとした答えを得られぬまま挑戦をしては失敗し、また思い悩む。
けれども、そうやって悩んだり、試行錯誤したりするうちに、おぼろげではあっても、自分なりの道が見えてくる。

「自分は何のために生まれてきたのか?」・・・そんな大仰な問いに対する答えは導けなくても、少なくとも「自分のやりたいことは何か」「自分のとるべき道は何か」の方向性は見えてくる。