許し

過去に血のつながった家族にゆるせないことをされたり、言われたりした。
子供のころ、親同士がいつもケンカをしていた。
それらを、今でも根に持っている。
もういい大人なんだし、仲良くしようと言葉を交わすのだけれど、当時を思い出して、どうしても好きになれない。
家族なんだから、いい関係を築きたい。
でも、どうしても過去の感情を捨てきれない、と感じている人は多いのだそうです。

戦後、殺人事件は減りつつありますが、身内による殺人は減っていないとのことです。
介護疲れや生活が苦しいのも理由の一つであるといわれています。
ですが、距離が近い家族だからこそ、根っこにある甘えが満たされなかった時、「なぜ分かってくれないのか」と不満を抱きやすく、かえって憎悪を燃やしてしまうということではないでしょうか。

人を傷つけても、時間は元に戻せません。
でも、自分が過去にしてしまった行為から解放されなければ、たった一つの失敗にいつまでも縛られ、人間関係は回復できなくなってしまいます。
それは、自分自身の自由を阻害してしまいます。

人間の活動には過ちを産む可能性はあります。
やってしまったことは取り返しがつきませんが、それに対して「許し」というものがなくてはなりません。
「許し」は、延々と続く復讐の連鎖を止め、許す者と許される者を自由にします。
感情的には許せないけど、そうしないことには先に進まないから仕方がない、というように許しには我慢や忍耐の側面はあります。
また許しには、人間の感情の流れを考えて、冷静な理性を必要とします。

「許し」とは復讐の対極にある、人間らしい理性的な行為です。
「許し」は、自分を傷つけた相手との断絶を解き、相手が犯した過ちと、その仕返しが連鎖してしまう可能性から、相手と自分を自由にします。