解決できない苦しみもある

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

苦しみについて考える中で分かったことは、他にもあります。
それは「世の中には、解決したり乗り越えたりすることができる苦しみと、そうでない苦しみがある」ということです。
苦しみの中には、希望と現実のギャップを埋めることで、解決できるものもあります。
たとえば、よい成績が出せるよう仕事や勉強に励んだり、好きな人に振り向いてもらえるよう自分を磨いたり、より豊かな生活ができるよう転職を考えてみたり。
そうした努力が実を結び、現実が引きあがって希望している状態に近づけば、ギャップは小さくなり、苦しみはある程度解決します。

どれだけ医療や化学が進歩しても解決できない苦しみはあります。
たとえば、ガンなど、重い病気を宣告されたとき、多くの患者さんは無意識のうちに「どうして私がこんな病気に?」と口走ります。
治療の効果がなかなか上がらず、「頑張って抗がん剤を続けているのに、どうして治らないんですか?」という患者さんもいます。

このように、どれほど医学や科学が発達しても、希望と現実のギャップが埋められるとはかぎらないし、苦しみの原因をすべて取り除くこともできません。
生きている限り、人には必ず、解決できない苦しみがつきまとうのです。