観察力と集中力を高める

ネガティブな思考は、重い空想です。
重いから心の底に沈みこみ、増々暗い所へ向かいます。
そして重みのせいで、なかなか浮上することができません。
だから当の本人にとっては、かなり深刻な状態まで進行してしまうのですが、他人から見ると、さほど深刻には見えないのです。
ウツ状態になるとか、場合によっては自殺とかが起こると、「まさか、あの人が・・・」と周囲の人が意外に思うのです。
芥川龍之介の場合でも、遺書に「ただ、ぼんやりした不安」という理由を書き残しています。

これらは特殊なケースではなく、人間は「空想」に負けてしまうのです。
誰でも人間の心は混乱しています。
町を歩いていても、頭の中では特定のテーマについて考えているのではなく、まったくバラバラのことを思い浮かべています。
自分の意識とは無関係に、支離滅裂なイメージが沸き起こり、それに心は囚われてしまいます。

このような「心の暴走」を止めなくてはいけません。
そのためには、まず自分の状態を自覚することだといいます。
私たちは、自分の心に対する「観察力」と、それに伴う「集中力」が希薄だといわれています。
なぜなら、自分の心と対峙するのは面倒だし怖いからです。
もし自分に十分な観察力と集中力があれば、ネガティブな心の暴走を意識し、それを止めるための努力をするでしょう。
それで少なくとも、心を重い質量から軽い質量に変化させ、浮上のきっかけにはなるはずです。

集中力を高めるためには訓練がいります。
瞑想しながら、数を「60から59、58・・」のように小さい方へ数えていく。
ご飯を食べながら、「ひと噛みひと噛みのすべて」に意識を集中する。
自分の腕をゆっくり上げながら「右腕を上げます、上げます、上げます、止めます、下ろします、下ろします」のように意識をそのことだけに集中させます。
たった1分間でも、気持ちを集中させることはなかなか難しいですよ。
気持ちを集中させようとすると、自分の意識とは無関係に「心の暴走」が始まるのが分かります。
でも、それに負けずに1分だけでも集中できると、心は「スッキリ」しますし、集中するという感覚がどういうものかが分かってきます。
瞑想は、意識の暴走を止めるための訓練なのです。