親バカ

投稿より

母は、料理がとても得意でした。
高校時代は、毎日弁当を作ってくれました。
すべて手作りで、見た目もきれいでおいしくて、友達にはちょっと自慢の弁当でした。
母も仕事を持っていたので、朝の弁当つくりは戦争だったと思います。
それなのに私は、煮汁が弁当袋に滲んでいると「今日は汁が出ていたよ!」と、文句を言いました。
すると母は、次の日は煮汁が出ないように、片栗粉で固めたり、いろいろ工夫をしてくれました。

またある時、私は母とけんかをした時、母は「明日からは弁当は作らないからね!!」と言って怒っていました。
でも次の日になると、ちゃんと弁当を用意してくれていました。
「なんだ、作らないって言っていたけど作ってくれたんだ」と、当たり前のように礼も言わず弁当を持って学校へ行きました。
昼に弁当を開けると、ケチャップで「バカ!」と書いてありました。
けんかしても、子供のことが可愛くて仕方なかったんだろうなと思い出します。

その母は、54歳という若さで旅立ちました。
いま私は、自分の子供のために弁当を拵えながら母を思い出します。

「お宅のバカを出せ」と言ったら、親を出した人がると聞いたことがあります。
「親バカ」といって、親は子供のことになると「バカ」になれるんだよと教えてくれました。