親のこころより

ツバメの詩

軒下の梁に、庭のツバメがいる。
雄と雌が、仲むつまじく大空を飛び交っている。
口に泥をくわえてきて、垂木の間に、せっせと巣を作り始めた。
そこには、四羽の雛が誕生した。

子供たちは、日に日に成長していく。
食欲が旺盛で「お腹がすいた」と、しきりに泣き叫んでいる。
親は、餌になる青虫を懸命に探し回っているが、なかなか捕らえることができない。
親の苦労を知らない子供たちは、どれだけ食べても「もっともっと」と催促して泣き続けている。
親は、くちばしや爪が折れそうなほど疲れても、子供のことを思うと、また力がわいてきて餌を探しにいく。
親は、わずかな間に千回も往復して餌を運びながらも、巣の中の子供が、お腹をすかして泣いているのではないかと心配し続けている。

苦労して餌を運び続けること30日。
子供たちはだんだん太ってきたが、母親は、みるみるやせ細っていく。
それでも親は、子供の成長を喜びとし、我が子に言葉を教え、羽毛をきれいに繕ってやることに一生懸命であった。

ようやく子供たちの翼が一人前になってきた。
ある日、親は、子供たちを巣から連れ出して木の枝に並ばせた。
広い大空に魅了された子供たちは、翼を広げて、思い思いに四方へ飛び去っていく。
振返って親を見ることもなかった。

驚いた親は「どこへ行くんだ。帰ってきておくれ!」と、必死に呼んだ。
声がかれるまで叫び続けたが、ついに子供たちは帰ってこなかった。
親は空っぽになった巣に帰り、一晩中泣いていた。

親ツバメよ、そんなに悲しむな。
これまで自分が親に対してやってきたことを振返り、反省してみるがいい。
親ツバメよ、おまえも若い頃、母親を捨てて高く飛び立ったではないか・・・。
あの時の父母の悲しみを、おまえは今日、やっと知ったのだ。