見知らぬおじさん 3

だが娘の誕生日だけはどうしても忘れられず、毎年プレゼントだけを贈り続けた。
筆箱や本といったささやかな物を、差出人の欄は何も書かずに送った。
それを元妻が、娘に渡してくれていたかどうかは分からない。
ただ「娘の誕生日を祝う」という行為だけが小さな楽しみになっていたのだ。

それも、娘が中学生になる歳にはやめようと決めていた。
娘からすれば私は「知らないおじさん」、こうしてずっとプレゼントが届いても迷惑だろう。
娘には新しい未来がある。
私も別の道を歩まなければいけない。
ただ娘の幸せだけを願い、英語の辞書を送って最後にすることにした。

それから1か月ほど経ったある日、私のアパートに郵便物が届いた。
差出人の欄にはなにも書かれてない。
小さな箱を開けてみると、中から出てきたのは水色のネクタイピンとメッセージカード。
メッセージカードを開くと、そこには初めて見る可愛らしい文字が並んでいた。

「いつも素敵な誕生日プレゼントをありがとう。私もお返ししようと思ったのだけど、誕生日が分からなかったので(汗)今日送ることにしました! 
気に入るかなあ・・・見知らぬ子どもより。」

その瞬間、はっとした。
その日は「父の日」だった。