見知らぬおじさん 2

だが長くは続かなかった。
娘が小学校に上がる歳のことだ。
例年通り私がスーツを着て、プレゼントを持って母子のもとを訪れると、元妻から「もう会いに来るのは最後にしてほしい」と言われた。
そろそろ、いろんなことを理解してしまう年頃だからと。
それが理由だという。
私にはわかっていた。
新しいことが始まろうとしているのだ。
娘にもやがて、一緒に誕生日を祝う同級生ができるだろう。
元妻は、再婚を考えているかもしれない。
そんなところには、”見知らぬおじさん”がいてはいけない。

私だけが過去の中にいた。
年に一度、家族のような時間を繰り返せば、いつか二人が私を「お父さん」と呼んでくれる日が来るかもしれないと、そう本気で信じていた私は愚かだった。
どれほど切実に願っても、一度壊れてしまったものは元には戻らない。
これが現実かと思い知った。
「あっ、見知らぬおじさんだ! 今日は遊びに行かないの?」
「今日はね、おじさん、もう行かなきゃいけないんだ」
「なんだ、残念!」
母子にとってはそれが一番の選択なのだ。
「ごめんね、元気でね」
私は力一杯目をつぶり、手を振る幼い娘の姿をまぶたの裏に焼き付けた。
「バイバイ!」
これ以来、母子とは会うことはなくなった。