褒めること

いのちの言葉 精神科医 なだいなだ

患者さんたちは、その自由の中に放り出されたようなものかもしれません。
酒を飲もうが飲むまいが、お前さんの人生じゃないか、と。
だから、お金を渡されたし、鍵も開けられた。
その中で、一か月なり二カ月なり、お酒を飲まないという選択をしたわけです。
そうやって病院を退院していくと、「うちに帰っても病院と同じようなことをやっていればいいな・・!」となるわけです。

それでも、中にはまた飲み始める人も出てきます。
結局、アルコール依存症というのは、治る、治らないの問題ではなく、1年やめていたか、1カ月やめていたかの問題なのです。
それは、患者さんにしてみれば、努力を続けてきたか否かの問題なんですね。
ただ私たちは、その褒め方を知りませんでした。
「たったの2カ月、だらしねえな。もうちょっと、がんばれないもんかよ」と、私も言っていました。
すると、「2カ月だって難しいんですよ。先生は、あんまり酒を飲んだことがないから、酒の誘惑っていうのを知らないんでしょう!!」なんて言われたものです。