行先を知ることで安心を得る

いのちの言葉 臨床心理学者 河合隼雄

老いの話しをすると、どうしても死の問題を考えざるを得ません。
現代は、便利に生きるという点で急激に発展してきました。
どのように快適に生きられるだろうかと考えすぎて、どのように死ぬのかということを忘れている人が多いんですね。
昔は「死んだら極楽に行けますよ」、キリスト教なら「最後の審判がありますよ」と教えられてきました。
しかし、今は、そんなことは簡単に信じられない、それでも死は訪れます。
にもかかわらず、死をどのように考え、どう対処するのかは、ほとんど話し合われていません。
これは、ものすごく不健康なことかもしれませんね。

旅に出るものは、行先のことをよく知っているから安心していくのです。
現代人は、死ぬことをほとんど知らずに生きているから不安になるのです。