苦しみと向き合い、人生にとって大切なことに気づく

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

苦しみは決して悪ではありません。
人が真の意味で良く生きるためには、苦しみと向き合い、そこから学ぶことが必要です。
どんなに恵まれた社会で暮らしていても、生きている限り、人には必ず苦しみがつきまといます。
学校の成績が上がらなかったり、仕事で成果を出せなかったり、友だちや同僚との人間関係に悩んだり、お金のやりくりに苦労したり、自分や家族の健康を心配したり、恋愛がうまくいかなかったり・・・。
自分自身が好きになれないと悩んでいる人もいるかもしれません。

多くの人は、苦しみから逃げることばかり考えているはずです。
今現在苦しんでいる人の中には、もしかしたら自分は不幸だ、苦しみながら生き続けるより死んでしまった方がましだ、と思っている人もいるかもしれません。
しかし、苦しんでいる人は本当に不幸なのでしょうか。
苦しみを抱えながら、生き生きと過ごすことはできないのでしょうか。
私はそうは思いません。
なぜなら今まで、これ以上の苦しみはないという絶望の中にありながら、幸せに穏やかに生きる人をたくさん見てきたからです。

私は人生の最終段階の医療に携わり、2800人の患者さんの看取りにかかわってきました。
ほとんどは末期ガンの患者さんでしたが、人生最後のときが近づいてきているという究極の苦しみの中で、彼らは実に多くの大切なことを学んでいました。
人のやさしさや思い、人との絆、自然の偉大さなど、健康な時には見過ごしていた、自分にとって、あるいは人生にとって大切なものに気づき、自分が生きてきた意味を考えるようになったのです。
そしてそれを見出したとき、人は今までとは違った生き方に目覚め、本当の幸せや穏やかさを手にすることができるのです。