自然死を邪魔させない

やはり死ぬのはがんでよかった 医師 中村仁一

ともすると、日本人は誰にも看取られずに死ぬのはかわいそうだ、と思いがちです。
しかし自然死ならば、ぼんやりとしたまどろみの中で、いい気持であの世に旅立つわけですから、誰も傍にいなくてもいいのです。
そういう意味では、誰にも邪魔されない孤独死は、幸せな死に方と言っていいでしょう。

私が夜中に急変しても、かかりつけの医者を呼ぶ必要はないと家族には言ってあります。
医者が来ても生き返らせることはできないのですから、臨終に立ち会う必要はありません。
反対に、この時、家族が救急車を呼んだら大変です。
彼らは救急救命をするのが仕事ですから、必死に息を吹き返そうとします。
病院に着いたら延命措置を施されますから、そうなったら自然死は遠のいてしまうのです。