自然死は・・・

大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

死に際には、飲み込む力も弱ってきます。
しかし、心優しい介護職員は1口でも1匙でもと使命感に燃えて涙ぐましい努力をします。
その結果、のど元にものが詰まってゴロゴロと音がして苦しみます。
そうすると、鼻から管を入れて、それを吸い取る吸引という荒業を施さねばなりません。
死にゆく人間を二重に苦しめることになっているのですが、介護職員にはあまりその感覚はないようです。

無理やり飲ませたり食べさせたりせず、穏やかな「自然死」コースに乗せてあげるのが本当に思いやりのある、いい看取りのはずです。
時には介護においても、できることであっても控える方がよいこともあると考えなくてはいけません。

以上のように、現在では、医療の虐待のみならず「食事介助」「生前湯灌」「吸引」などの介護の拷問を受けることなく、死ぬことは至難になっています。
今や、誰にも邪魔されず、「飢餓」「脱水症状」という、穏やかで安らかな「自然死」コースを辿れるのは、「孤独死」か「野垂れ死」しかないというのが現実です。