自分も信用できない・・・

いのちの言葉 作家 高史明

夏目漱石は「こころ」の中で「私は、私自身さえ信用できないのです。つまり、自分で自分が信用できないから人も信用できない・・・」と書いています。
まさに孤独地獄そのものです。
ところで、漱石と同じような言葉を、我が家の死んだ子供も書いていたのでした。

「じぶんじしんの のうより 他人ののうの方がわかりやすい みんな しんじられない それは じぶんが しんじられないから」 
そして、その「じぶん」という言葉の前に2つの詩がありました。
はじめは「人間」という題で、ただの1行でした。
「人間ってみんな百面相だ」と。
次の詩は「ひとり」でした。
「ひとり ただくずされるのを まつだけ」

漱石は「こころ」の中には、こんな言葉もありました。
「平生はみんな善人なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです」
漱石は人間のまさに百面相である闇の一部分を見つめていたわけです。
我が家の子も、12歳になってその闇に気づいたのでした。