自分は無力であるという苦しみからも、学べることはある

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

以前、看取りにかかわったある患者さんは、町工場の職人さんで、壊れた部品を新しいものに交換する仕事をしていました。
その患者さんはガンになり、医者から「治療方法がない」と言われ、「治すことのできない病気を抱えた自分は壊れた部品同様、役に立たない存在だ」と感じ、生きる意味を失ってしまったそうです。
ところが、ホスピスで暮らすうちに考えが変わり、やがて「こんな自分でも、スタッフは人間として温かく接してくれる。人間は機械や部品ではない。たとえ役に立たなくても、生きていてよいのだ」と話してくれるようになりました。

もしかしたら皆さんの中にも
「自分は家族の期待に応えられていない」
「仕事で成績を上げられていない」
「周りに迷惑ばかりかけている」
といった思いに苦しんでいる人がいるかもしれません。
しかし、どうか無力な自分を責めないでください。
人は誰でも、そこに存在しているだけで、誰かの支えになることができるのです。

また、自分は無力であるという苦しみからも、必ず学べることがあるはずです。
その苦しみとしっかり向き合ったとき、人は「たとえ何もできない自分でも、生きていてよいのだ」と考えられるようになるのではないと私は思います。