自分の欠点も長所になる

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

つらい気持ちを持ち続けている人は、たいていが強いコンプレックスを持っている。
人前で話すのが苦手だとか、人付き合いが下手だとか。
しかし、それがどれだけ切ないことなのだろうか。
自分にとっては、とても深刻な問題だったとしても、他人から見れば大した問題ではないということも多い。

ある雑誌記者は取材したり、インタビューしたりするとき、声が震えてしまうくらい緊張することを自覚していたそうだ。
記事を書くことは大好きなのに、取材は苦手。
何年もそのことに苦しみ、職業を変えた方がいいかとも思った。
けれども、あるとき取材先の人にこんなことを言われ、考え方が変わったそうだ。
「前に取材に来た人は、なんだかセールスマンみたいにぺらぺらしゃべって、うさん臭かったけど、あんたは誠実そうでいいな」
緊張して言葉に詰まったり、少しおどおどした姿が、実は取材先からは好感を持たれたり、思いやりを持ってみられたりしていたことを知ったのだ。

世間の付き合いでは、私たちは長所よりも短所によって、人に気に入られることが多い。
自分の苦手な部分ばかり見ていると気がつかないことも、人の目を通して見ると、案外、自分の短所は愛すべき部分であるかもしれない。