自分の人生を語れるか

いのちの言葉 精神科医 なだいなだ

シンセイ天皇と称する彼は、確かに病気で、病院に入ってからもう20年が経っていました。
しかし、今は病気であり続けることの方が幸せなのではないかと思ったのです。
「天皇だなんて妄想を抱いていたけれど、どうして自分はこんなことを考えてしまったのだろう?」そう彼が気づいたところで幸せだろうか?と思ったんです。

歳をとったときに、出世だとか肩書きなんてものは何の役に立たないんですよ。
老人ホームで、「私は大会社の部長だったんだ」なんて言っても、「それが何さって」皆から言われます。
みんなの人気の的になる人になるというのは、自分の人生を語れる人ですよ。
詐欺師で捕まった人でも、その人生は結構面白かったりします。
歳をとってからの価値というのは、自分の人生に語るべきことがあるかどうかなんです。