聞き上手

アメリカの著名な作家、デールカーネギーはある日、N・Yの出版業者主催の晩さん会の席上で、有名な植物学者に会った。
デールカーネギーは、それまでその植物学者とは一回も話しをしたことがなかった。
ところがデールカーネギーは、学者の話にすっかり魅了され、珍しい植物、新種をつくり出す様々な実験、屋内庭園の作り方など膝を乗り出して聞いていた。
デールカーネギーは、屋内庭園についていくつかの疑問を持っていたのだが、彼の話しを聞いてすっかり疑問は解けたのである。

晩さん会には、他にも十数人が参加していたが、デールカーネギは非礼を省みず、他のお客さんたちを無視して何時間もその植物学者と話したのである。
夜も更けてきたので、デールカーネギは皆に別れを告げた。

その時、植物学者はその会の主催者に向かって、デールカーネギのことをさんざん褒めちぎり、しまいにはデールカーネギは”世にも珍しい話し上手”だと持ち上げてしまったのである。

後でデールカーネギはこう言っている。
「話し上手とは驚いた。あの時私はほとんど何もしゃべっていなかったのである。しゃべろうにも、植物学に関しては全くの無知で、私には話す材料などなかったのである」
「もっとも、しゃべる代わりに聞くことだけは確かに一心になって聞いていた。心から面白いと思って聞いていた。それが相手に伝わったのだろう。従って、相手は嬉しくなったのだ。こういう聞き方は、私たちが誰にでもできる最高の賛辞なのだから」