老衰死

大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

私のいる老人ホームにいた海老原さん70歳男性は、食欲が落ち、やせてきて、胃腸の具合が思わしくないということで入院、検査をしたところ、進行胃ガン、余命3カ月と言われました。
ガン性の腹膜炎も起こしており、ガンに対して本人が積極的治療の意思がないため、2週間で退院して老人ホームへ帰ってきました。

痛みはありませんでしたが、がん性腹膜炎で腹水が増え、だんだん蛙腹がひどくなりました。
あまりしんどがるようなら、腹水を抜かなくてはならないかと思っているうちに傾眠状態になり、1滴の水も口から入れられなくなりました。

せっかく。本人が穏やかに死のうとしているのに、点滴注射や酸素吸入をして邪魔をするようなことはしません。
老衰死コースを辿って、8日目に亡くなられました。
とても安らかでした。
驚いたことに、亡くなった時には、あの蛙腹がぺしゃんこになり、完全に腹水が消えていました。
人間生きるためには水分が必要なんです。
だから、体にある水は全部使い果たすんです。
体の自然な仕組みはこんなにもすごいのかと驚愕しました。