老いの花道

いのちの言葉 臨床心理学者 河合隼雄

一昔前には、年長者はある程度尊敬されていました。
年長者は深い知恵を持っている、みんなで尊敬しましょう、という気持ちがありました。
ところが今は、そういう風潮が急激になくなっていったのではないかと思います。
社会がどんどん変化していくと、若い人はコンピュータのことを知っているけれど、老人は何も知らないじゃないかという言い方ができます。
そんな価値観だけで物事を見ていくと、極端なことを言えば、高齢者は邪魔者だという考えさえ出てきます。
私たちが子どものころは「親孝行、したいときには親はなし」と言っていましたが、最近では「親孝行、したくないのに親がいる」と、悪い冗談を言います。

論語の中に私の好きな言葉があります。
学ぶことは大事なことだけれど、学んでいる人よりも好きでやっている人の方が上で、好きでやっている人よりも楽しんでやっている人の方がもう一つ上だという言葉です。