穏やかな最期のために 2

日本人の死に時より 医師の書

男性は奥さんと二人暮らしで、息子さんが少し離れた所に住んでいました。
男性は、転移の痛みを抑えるため、かなり多めのモルヒネを処方していました。
痛みは何とか抑えられていましたが、徐々に食欲が落ちてきました。
奥さんは心配して、点滴を希望しました。
しかし本人はそれを嫌がっていたようで、私は男性に「点滴をした後の感じはどうですか?」と訊ねました。
答えは「何も変わらない・・」でした。
もし脱水があるなら、点滴をすれば楽になるはずす。
栄養補給に関しては、腕からの点滴では気休めにすぎません。

男性は、身体の自由がきかないことの苦しさに耐え兼ね、あまり長く生きることを望んでいませんでした。
ある夜、奥さんから電話がかかってきました。
駆けつけると、男性は全身に汗をかいて喘いでいました。