秋を探そう

ココロの架け橋 中野敏治

先日、小学校1年生から中学校3年生まで一緒の、特別支援学級の合同合宿学習に参加しました。
それぞれの班は、小学生と中学生が一緒になっています。
義務教育の9年間の成長を見ることができる宿泊学習でした。
中学生が小学生の面倒を見る姿や小学生が自分でできることは自分で行うという光景がいろいろな所で見られました。

この宿泊学習ではたくさんの活動が盛り込まれています。
活動もできるだけ小学生に合わせたものが多くあります。
「秋を探そう」という活動がありました。
宿泊学習の場所は森の中です。
その森の中で、班別に秋を探そうというのです。
この活動では、小学校高学年の児童がリーダーになりました。
リーダーの児童が班の先頭になって歩きだしました。
紅葉している葉を拾い集める児童、ドングリを拾う生徒、森の中を歩きながら、自分でみつけた秋を袋に入れていきました。

小学1年生の女の子が袋から出したものは、紅葉した葉ではなく、枯れた落ち葉ばかりでした。
班のみんなは驚きました。
他の小学校低学年の子どもたちは「どれが秋なの?」「これって枯れた葉っぱだよ」などと言いました。
その時引率していた若い先生が「○○ちゃん、たくさん探せたね。みんな秋の葉っぱだよね。秋になったから、葉っぱが落ちたんだよね」と声をかけたのです。
泣きそうになっていたその女の子は、引率の先生を見上げてにこっとしました。
その姿を見て、中学生も「秋があったね」と声をかけました。
声をかけられて元気になった女の子は、座っていた椅子から飛び降りて、まだ袋に入っていた落ち葉を散らかしたのです。
そして、たくさんの落ち葉の中から、何かを見つけているのです。
引率の先生は、その女の子の横に座り、一言も声をかけず、ただじっと見守っていました。
すると、女の子は落ち葉の中からドングリを拾い出したのです。

寡黙な女の子は、毎日、自分の思いがなかなか人に伝えられない生活を送っていたのです。
行動を見るだけでは、なかなか分からない女の子の姿も、その子なりの理由があったのです。