私のお通夜

今日は私のお通夜の日です。
退屈なお坊さんのお経が終わり、参列者は「通夜ぶるまい」の部屋に移動していきました。
料理とお酒を目の前にして、少し緊張の糸が解けてきたのか、一人一人の顔に安どの表情が見える。
上から眺めていると高校時代の友人も何人か来ている。懐かしいなあ。
「おい、加藤元気か?しばらくぶりだな」と上から声をかけてみたが、加藤は反応しない。
「ああ、そうだった。俺は死んだのだった」と納得した。

加藤は高校時代の渡辺と話し始めた。
「おお、渡辺元気そうじゃないか」
「おまえもな、加藤。いつ以来だ、会うのは」
「そうだな、野球部の原君の葬儀以来だから15年ぶりか」
「いやー、俺たちが揃うのは葬儀の時だけだな」
「そうだな、ところで平山は何で死んだんだ」
「ガンらしいよ。でもあいつは、一切治療しないで逝ったらしい。さっき、身内の人に聞いたんだ」
「何でだ・・?」
「抗がん剤やってほんの少し寿命が延びたとしても、抗がん剤の副作用で普段通りの生活ができなくなることの方が嫌だったみたいだ。つまり、残りの人生を無駄にしたくないと思ったのだろうな・・」
「そうか、あいつらしいな」
「知人、友人、親戚の挨拶まわりもやって、お金の整理、葬儀の手配も自分でしたみたいだ」
「そうか、そういう生き方もあるんだな。でも、あいつのおかげで、昔の仲間が集まれたのはよかったな・・」
「そうだな・・」

そこへ、長田、吉田、春木、恒松君らも合流して飲み始めた。
お酒が入り、だんだん声が大きくなって昔話に花が咲いた。
「今度定期的にみんなで集まろうよ。もっと他の人にも声をかけてさ・・」
「そりゃあいいな。もう俺たち定年で、時間がありあまって退屈しているから何よりだ・・」

 「おい!俺も呼べよーー!」と、上から叫んでみたが、やっぱり誰も反応はない。
でもいいや、俺は自由に空間移動できるから、お前たちに憑依して参加してやるからな。でも、よかった。みんな楽しそうで・・」

「ジリリリーーン」目覚ましが鳴って目が覚めた。