男性にも更年期障害がある

70歳からの選択 和田秀樹

男性にも40~60代にかけて更年期が訪れます。
男性ホルモン、テストステロンが減少していくのです。
つまり、男女とも50代頃から、中性化が進行するわけです。
それぞれの性ホルモンの減少は、心身の変調をもたらします。
女性は、更年期障害となって現れますが、実は男性も、男性更年期障害として顕在化します。
自律神経の乱れから、全身にさまざまな症状が現れるのです。
疲労感、倦怠感、抑うつ症状、多汗、動悸、残尿感、肩こり、関節痛などにも、ホルモンバランスの変化が関係していることがあります。
特に、日本人の場合は、男女ともに更年期に心の症状が強く現れる傾向にあります。
うつ病と診断される人にも、多数の更年期障害が含まれているとみられているのです。

男性ホルモンが減少することで、物事に対して意欲が減退し、老いを感じやすくなります。
加えて、記憶力の低下も起こります。
これは、男性ホルモンの減少が記憶に影響する神経伝達物質のアセチルコリンを減らしているとみられるからです。
男性ホルモンの減少が大きいと、気持ちの落ち込みがひどく、焦燥感が募るなど、うつ症状を引き起こす原因になります。

男性の更年期障害は、自然に収まることは難しいと言われています。
また、女性の更年期障害ほど知られていないため、うつ病や適応障害などの他の精神疾患と誤解されるケースも多く、適切な治療を受けるまでに時間がかかる傾向にあります。