生涯現役と悠々自適

みっともないお金の使い方 川北義則

テレビ局で長年ディレクターをしていた人が、58歳で定年を迎えた。
関連会社の役員の座が用意されて現場を退いたが、63歳で役員定年になると、番組制作会社の1契約社員となって現場復帰した。
給料も安いし、年下からこき使われる立場だ。
大企業で、そこそこの地位にあった人だと「そんなこと自分にはできない!」と思うかもしれない。
でも彼は、そんな職場で嬉々として働いている。
現場が好きな上、「俺から仕事をとったら何も残らない」
これが、彼の口癖だ。

欧米人は基本的に働くのが嫌いだ。
キリスト教では労働を奨励していないから、定年を迎えるとさっさと退職して、悠々自適の日々に入る。
定年を待たないで、できるだけ早くリタイアして悠々自適の生活をしている人が成功者と見なされる。
欧米人と日本人の違いだ。
仕事をやめても彼らは退屈しない。
それだけの準備を前もってやってきてるからだ。
日本人は働くのが好きで、働かないことを想定した準備などあまりしない。
それで働けなくなると、何をしていいか分からなくなり、かえってストレスをためることになるのだ。