生きるとは

日本人の死に時より 医師の書

いくら長生きといっても、身体が自由にならなくて苦しくて仕方がないような状態までは望まない、という人も多いでしょう。
しかし、今、寝たきりになっている90歳代の人たちも、思いは同じだったはずです。
望みはしないけれど、生きてしまう。
それが現代であり、現実なのです。

歳をとると、いろいろな不都合が出てきます。
身体機能が低下し、ガンや心臓発作の恐怖におびえ、腰やひざの痛みに泣く。
連れ合いに先に旅立たれ、家族に疎外されたり、社会的な地位や居場所を失ったり、ということもあるでしょう。
当然気持ちがふさぎます。
これが、老人性うつ病の起こる仕組みです。

うつ病にかかるかどうかの分かれ目は、心の準備にあるようです。
歳をとったのだから仕方がない、と受け入れられれば、まだしも息がつけるのです。
こんなはずではなかったとか、まだまだ俺は負けんぞ、などと頑張っていると、ままならぬ現実に心が押しつぶされてしまうのです。