生きることって

1,000人以上看取った緩和医の話し

死が遠くなった現在ですが、現実には誰でも「病」「死」「老い」と向き合って生きています。
また仏陀が言ったように、「愛別離苦アイベツリク=愛するものと別れる苦しみ」「怨憎会苦オンゾウエク=怨みや憎しみを持つ相手と会わなければならない」「求不得苦グフトクク=求めているものが得られない」「五蘊盛苦ゴオンジョウク=物質的・精神的五つの要素(色・受・想・行・識)に執着することから生じる苦しみ」と向き合わざるを得ません。
十代、二十代の若者が、また子供が小さい三十台、四十代の若い親が死んでいきます。
そんな最期の姿をひたすら見続けていくと、生きることとは何か? 幸福とは何か? そういったことを考えないではいられません。

私たちは、毎日起こる生理的欲求を満たさなければ生きられません。
また生理的欲求以外の何かを手に入れても、いつかは飽きてしまいます。
それでも欲求は沸き起こってきます。
それを満たしているうちに、いつの間にか人生は終わりに近づいていきます。
そこで、人生の意味とは何か? 苦しみの多い世の中に生きる意味とは何か?
それを一人一人が考えていくことが大切なのだと思います。

自らにとってのいい人生とは何か、そこから考えてみることが肝要です。
要は自分の心の満足度の問題ですから、自分の心の持ちようを確立するのです。
晩年になると、よく「人様のお役に立ちたい」と仰る人が多くなります。
それは、自分の欲求を満たすより「人様にありがとうございました・・・」と感謝された時、自分の心が一番喜んでいることを経験上知っているからです。