生きる 6

案外、自分って思っていたより強いものかもしれません。

50代で乳がんと診断された女性は、すでに肝臓と首の骨に転移していました。
首の骨の転移により、視神経が圧迫され右目だけ動かなくなり、ものが二重に見えるようになってしまいました。
娘さんの結婚式が四か月後に控えてましたので、娘の晴れ着姿を見るまでは頑張っていようという目標を道しるべにしていました。

この頃は「生きよう」と前向きに考える時と、「私はガンで、体中に転移があるんだ」という、現実に引き戻されて絶望的な気持ちになるときを、行ったり来たりしていました。
絶望的な気分の時は、悲しくて仕方なく、友達や夫の前で思いっきり泣いていたそうです。
やがて、結婚式も終えて少し肩の荷が下りたとき、心境が少し変わったそうです。
「もう、ガンになっちゃんたんだから仕方ないよ」という、あきらめのような気持ちが根底にあるのに気づいたのです。
すると、「友人が心配してくれる時、年老いた両親が心配してくれる時など、穏やかな日々を過ごすことは難しいかもしれないけど、この日常が1日でも長く続くように頑張ってみるか」という前向きな気持ちが湧いてきたのだそうです。

時間が経つ中で、「自分は結構強くなってきたな、何とかやっていけるものだな」と思えるようになったといいます。
目の前のことを必死にやってきたら、ここまで来られた。
「へこたれずに頑張ったじゃん」と自分を褒めてあげたくなったといいます。