生きる 3

ガンになると、死を意識せざるを得ません。
「自分はいつまで生きられるのだろうか?」という不安や恐怖が生じますが、その裏返しとして、「実は、今日一日を生きていけることは当たり前のことではないんだ!」ということに気づきます。

人間は希少なものに、価値を見出します。
金も埋蔵量が非常に少ないので価値があり、その辺にゴロゴロ落ちていたら、だれも見向きもしなくなります。
同じように、今と同じ時間が永遠に続くと錯覚していますと、一日を粗末にしてしまいます。
でも、時間が限られていることが分かると、今日一日がとても貴重なものに思えてくるのです。

27歳でスキルス性の胃ガンになった男性は「自分は運がいいと思っていたけど、最悪の貧乏くじを引いてしまった」と言っていました。
そこでカウンセラーが、「怒られるかもしれませんが、くじを引かなかった方がよかったですか? つまり、病気になる人生だったら、生まれてこない方がよかったですか?」と尋ねました。
男性はしばらく考えてから「いや、くじを引かない方がよかったとは思いませんね。最悪のくじでも、引けた方がよかったかな・・」と言いました。
さらに「もっと生きられるはずだったと考えれば、悔しくてしょうがないですよ。でも自分がこの世に生まれてきたのは、奇跡的な偶然が重なって起きたことです。正直悔しい。でも、今生きられることに感謝して、精一杯生きていきたいですね・・」と言ったのです。

健康であるうちは、毎日があるのは普通のことかもしれません。
でも、突然の重篤な病気になるかもしれませんし、事故や天災に遭うことも絶対ないとは言い切れません。
恐れで頭が支配されてしまうのもよくありませんが、「健康はいつか失われるもの」という意識を心の片隅に持っていたほうがいいと思います。
なぜなら、「今日健康で過ごせることは本当にありがたいこと!」という感謝の気持ちが芽生えるからです。