生きる 10

立派な外科医でなければ自分はダメだ。
周囲の人に迷惑をかけてはいけない。
自分はダメな人間だ。
このように思ってしまうのです。
本当は、「悲しい」「頼りたい」といった気持ちがその人の奥底にあるのですが、もう一人の自分が「弱音を吐いてはダメだ!」という内なる声をかけるので、自分にプレッシャーをかけながら過ごさなければいけないのです。

「~せねばならない!」というもう一人の自分が、役に立っていた側面はあります。
「~しなければならない」という強いプレッシャーがあったからこそ、頑張ってこられたからです。
でも中年を過ぎ、体力、気力が衰えてくると、「~ねばならない」という、もう一人の自分についていくのがしんどくなります。
本当は、「もういいかな・・」「誰かに頼りたい・・」と言っているもう一人の自分を主役に抜擢したくなるのです。
なぜ「~ねばならない」という思いがよくないかと言いますと、「喪失」と向き合うためには、しっかりと哀しみ、しっかり落ち込むことが大切だからです。
でも、もう一人の自分がそれを許してくれないのです。

行き詰ることには、良い面があります。
行き詰ることは、今までとは別の道を探すきっかけとなりますので、「~ねばならない」自分から、「~こうしたい」自分へと、自分が自由になれるチャンスなのです。