生きているだけで意味がある

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

この世に生きているだけで意味があります。
平凡で価値のない人はいません。
健康なとき、人は中々自分自身や自分の人生に価値を見出すことができません。
事情があって挑戦できなかったこと、夢が叶わなかった経験があればなおさらです。
「こんな平凡な自分に、生きている意味はあるのだろうか」
「目的が果たせないまま生きている自分が許せない」
そう思っている人もいるかもしれません。

どのような人生を送ったとしても、そこには必ず何らかの意味があります。
それが、今まで看取りを通して数多くの患者さんの人生を見つめてきた私の実感です。

かつて、海軍の元軍人さんの看取りにかかわったことがあります。
その患者さんは、一言も「痛い」「辛い」とは言いませんでした。
私は医者として、少しでも痛みや辛さを緩和できればいいと思ったのですが、彼はそれを最後まで拒否し、最後まで我慢してきました。
その方は戦争で2人の兄弟を亡くしていたのですが、もしかしたら本人は「戦争で亡くなった兄弟が受けた痛みに比べれば、大したことはない」「自分は長く生き、家族を持ち、孫の顔を見られただけで十分に幸せだ」と思っていたのかもしれません。

自分で決めた目標をすべて達成させてこの世を去れる人など、そう多くはありません。
たとえ自分では平凡だと思う人生であっても、あるいは目標を達成できず志半ばで亡くなっても、人は存在するだけで、必ず何らかの役割を果たしているのです。